(大野市の行政改革)なぜ公共施設の再編が必要か。その目的を正しく伝え進める
1月27日~2月10日にかけて市民や市内事業者からの意見を募集するパブリックコメントが実施されます。詳細は(大野市の方向性)農業や産業振興、公共施設再編などの市民意見募集をご覧ください。
今回は、意見募集対象の一つである「大野市公共施設等総合管理計画~大野市公共施設再編計画編(案)」のポイントや私なりの視点をお伝えします。計画の概要などは大野市ホームページ(パブリックコメント)をご確認ください。なお、この計画は業務遂行上や政策的な観点から公共施設の必要性等について検討し方向性を決定したもので、これまで取り組んできた現計画の計画期間(平成25年度~令和4年度)を1年前倒しして改訂するものです。
○計画名 「大野市公共施設等総合管理計画~大野市公共施設再編計画編」
○計画期間と狙い 令和4年度~13年度までの10年間における公共施設の方向性を「維持(現状維持、用途変更、統合・複合化」「廃止(譲渡、除却解体)」「廃止検討」「見直し」に分類。本市の人口と財政規模に見合った最適な行政運営に取り組む
○再編目標と効果 303施設のうち「廃止(譲渡、除却解体)」対象とした20施設、延床面積で5,657㎡を削減し、令和元年度における施設維持管理経費全体15.4億円のうち約1億円の効果を見込む
廃止(譲渡、除却解体)対象施設とその政策課題
【宝慶寺いこいの森】令和4年度以降に民間事業者への譲渡を検討し、譲渡先がない場合は廃止する。なお現計画では、施設転用となっています。
宝慶寺いこいの森は広場やキャンプ、バーベキュー、総合案内所など8施設を備えた場所で令和3年度からは直営(管理委託)により運営しています。すべて市有地です。
【国民休養地(パークホテル九頭竜)】令和6年度の指定管理期間終了までに民間事業者への譲渡を検討する。なお現計画では、施設転用となっています。
現在、野外レクリエーション施設や交流ステーションとともに豊実精工株式会社による指定管理が行われています(令和6年度末まで)。すべて借地です。
【国民休養地(九頭竜スキー場、ヒュッテ)】令和6年度の指定管理期間終了までに民間事業者への譲渡を検討する。なお現計画では、施設転用となっています。
現在、九頭竜スキー場の運営やヒュッテの管理など、森山観光株式会社による指定管理が行われています(令和6年度末まで)。すべて借地です。
【和泉前坂家族旅行村】令和10年度までに民間事業者への譲渡を検討する。なお現計画では、施設廃止となっています。
現在、広場やケビンサイト、管理棟含めた3施設で、福井和泉リゾート株式会社による指定管理が行われています(令和5年度末まで)。すべて借地です。
【ぶなの木台コミュニティセンター】令和3年度末に機能を廃止し、施設の活用方法や譲渡先を検討する。なお現計画では、単独の行政区が使用するコミュニティ施設は地元へ譲渡する方向で進めるとし、平成30年度までに施設のあり方の検証や管理運営手法の見直しを行うとしていました。
現在、ぶなの木台団地のコミュニティセンターとして地元で組織する運営委員会による指定管理が行われています(令和3年度末まで)。すべて市有地です。
【子育て支援施設(大野市自然こども館)】令和8年度までに、使用団体への譲渡を検討する。譲渡できない場合、廃止を検討する。なお現計画では平成31年度(令和元年度)までに団体に譲渡する方針でした。
現在、奥越前まんまるサイトの事務所として貸与(使用許可)しています。すべて市有地です。
【下小池公衆トイレ】除却・令和3年度に廃止し、令和4年度に除却する。
刈込池や三ノ峰登山の利用者などが利用する駐車場のうち、下小池側駐車場内に設置されています。すべて市有地です。
【九頭竜保養の里(コテージ)】除却・令和5年度の指定管理期間終了をもって施設を廃止し、建物解体するとともに、土地の原状回復、借地の返還を行う。なお現計画では、現状維持となっています。
現在、隣接する九頭竜温泉平成の湯、ホテルフレアール和泉、広場・駐車場とともに株式会社メンテナンスナカムラによる指定管理が行われています(令和5年度末まで)。なお同計画では九頭竜温泉平成の湯(現状維持)、フレアール和泉ほか(見直し・令和10年度までに民間事業者への譲渡や用途変更を検討する)と方向性が示されています。すべて借地です。
【旧奥越農業共済事務所】除却・令和4年度に解体のための設計を実施し、令和5年度に解体予定。
昭和38年12月労働基準監督署として建築
昭和61年 3月 大野市が478,000円で取得し、奥越農業共済事務所として利用(~平成4年4月まで)
平成6年4月~平成26年10月まで一般社団法人 北陸電気保安協会と賃貸契約
現在は、スポーツ振興室の物置場所として利用、令和元年度からはひな人形の置場としても利用。すべて借地です。
【和泉体験農園堆肥舎】除却・令和4年度に解体のための設計を実施し、令和5年度に解体予定。
すべて市有地です。
【旧乾側幼稚園】除却・耐震性が無く利用できない施設のため、解体し借地を返還する。
幼稚園は令和2年度末を持って用途廃止済、すべて借地です。
○使用者目線での再編手順を徹底する
民間への譲渡を検討する際、まずは今提供されているサービスがある場合、そのサービスが維持されるのかどうかが重要となります。そのため、広く公募(全国なのか市内・県内のみなのか)を行うのか、現在の指定管理者を基本として行うのか、どちらにしてもそのスタンスが重要となりますので、しっかり確認徹底した上で進めていくよう求めていきます。
(過去記事)行政目線と利用者目線…公共施設再編を巡る目的と方向性
○相手との信頼関係構築へ(職員配置と働き方)
民間事業者、借地の場合の土地所有者など関係者との信頼関係が構築できなければ、譲渡なり除却解体、土地の返還は進みません。これまであった再編計画や施設の移築等においても借地にかかる交渉は法律の理解、相手によっては市外県外の行き来も必要となります。議会として誰を配置するかといった人事に口は出せませんが、この計画をしっかり進めるための職員配置や働き方について政策提言していきます。
「廃止検討」「見直し」対象施設と進め方
上記の廃止(譲渡、除却解体)施設20施設のほか、廃止検討21施設(延床面積15,895㎡)や見直し51施設(延床面積90,285㎡)もリストアップされています。
今後10年間の中で、廃止検討するのは誰なのか、それをどのように市民や事業者へ公開していくのか。見直しは何をどう見直していくのかなど、しっかり議論していきます。その前提として、将来のあるべき姿(人口は令和7年度末目標29,000人、令和12年度末目標27,300人。ともに大野市人口ビジョンの目標人口)を想定して、今何をすべきかという視点で行政改革、時代に合わない仕組みの変革を市民と共通認識を持って進めていく必要があり、政策提言していきます。
何を優先すべきか、キーワードは「優しく受け入れる」
施設は今後10年の間に耐用年数を迎えて利用できなくなる恐れがあります(大野市文化会館も耐用年数を迎える令和8年6月までに休館を検討する「見直し」に分類されています)。施設の維持管理・改修などを行う税収の不足、使用料の減少も見込まれます。
上下水道や道路・橋梁などのインフラ、医療や福祉、防災といった市民の生命を守るハード、ソフトの社会資本の維持更新と公共施設、両方すべてをこれまで通り維持していくことはできません。現状維持と位置付けられている「旧蕨生小学校」などはずっと行政が管理するのではなく、道の駅「越前おおの荒島の郷」に隣接している利点を活かして民間投資を呼び込んだ付加価値の創造を政策提言しています。
(大野市の産業振興)市内事業者の稼ぐ力とは?企業価値向上、経済の自立へでも取り上げましたとおり、人口が減少する中において地域内の経済循環率を高めて自立するためには所得の外部からの流入を増やす挑戦が必要です。中部縦貫自動車道の整備効果を活かして外貨を獲得して市内での雇用を増やす、所得を増やすことで税収、分配といった好循環が生まれます。そういった観点も今後、取り上げていきます。